胸部や腹部の血管が膨らむ大動脈瘤は、動脈硬化によって血管壁が脆くなり、痛みなどの自覚症状がないまま、やがて血圧に耐え切れず破裂して大出血となる危険な病気です。破裂を予防するために、これまでは外科手術による治療が行われてきました。そうしたなか、最近では「ステントグラフト」という血管内治療の新技術が登場し、切らない手術として急速に普及しています。
ステントグラフトは人工血管にバネ状の金属をつけたもので、これをカテーテルの尖端に込めておき、動脈瘤の位置に押し出します。人工血管はバネと患者の血圧によって動脈の内側に張り付けられるので、手術によって縫い付ける必要がありません。これで動脈瘤には血圧がかからず破裂を防ぐことができるのです。
この治療はカテーテルを足の付け根にある動脈から挿入するだけで、外科手術のように胸部や腹部を大きく切り開くことはありません。体への負担が軽く、治療翌日には食事や歩行が可能になります。入院期間も外科手術の半分以下、退院後の日常生活はほとんど制限されません。
腹部大動脈用ステントグラフトは6年前に保険適用となり、全国で約900例、また胸部大動脈用は4年前に開始されて3000例の治療実績があります。高度な知識と技術が必要なため、実施する医師には研修が義務付けられており、実施病院には必要な設備と管理体制が整備されていることが実施基準となっています。